会員企業様情報

植物の力を活用して”真無臭”を徹底追求。個人向けからビル・店舗へ市場を拡大

株式会社ハル・インダストリ
2026/08/22

 

静岡県内の水産加工場から出る魚特有のニオイ「アミン臭」を解決するべく、植物由来の消臭液剤を開発したことが創業の原点。「植物が生き抜くために磨き上げた高度な環境浄化能力」に着眼し、芳香でも脱臭でもなく“消臭“を実現し、高い支持を得た。

やがて「臭いもの対策」から「快適な空間提供」へと軸足を変え、アミューズメント施設へ浸透。さらに、繰り返しメディアで紹介されたことで、個人向けECが急伸。“消臭剤“の定番として評価を確立した。

最近では、衣服についたニオイ・菌・ウイルス・花粉を安心・安全に消臭する、消臭・除菌ミストシャワー「HAL・SHOWER」が、ホテルや商業施設、大型ビルなどで導入が進むなど、さらなる“真無臭“の追求を通じて、より幅広く快適な空間づくりを推進している。

※「週刊ダイヤモンド」2026年8月29日・9月5日合併号掲載、会員企業クローズアップより転載

 

取材こぼれ話(事業の原点、独自技術の科学、経営危機の克服、次世代のデジタル戦略)

株式会社ハル・インダストリ 代表取締役 松浦 令一 氏、取締役 松浦 仁音 氏

 

「消臭」という言葉の生みの親:静岡・清水の水産加工場から始まった「消臭屋」の原点

・地域課題から生まれた新技術: 創業のきっかけは1980年代初頭、日本一のマグロ水揚げ量を誇る静岡県清水区(旧清水市)特有の課題にあった。当時、街には大手缶詰・水産加工工場が立ち並び、魚の腐敗臭である「アミン臭(トリメチルアミン)」が深刻な公害問題となっていた。近隣住民からのクレームに悩む工場側に対し、当時20代後半だった松浦令一氏は、既存の「香りで被せる芳香剤」ではない、ニオイを元から断つ液剤の研究を独学で開始した。

・新聞記者が「消臭」として命名: この画期的な液剤が完成すると、液剤自体のニオイは全くしないのに、魚のニオイだけが劇的に消失した。その様子を目の当たりにした新聞記者が、「これは芳香剤でも脱臭剤でもない、臭いものが消えるから『消臭』だ」と記事に書いたことが、今日一般的に使われる「消臭」という言葉の始まりになったと言われる。

 ・「公害対策」から「快適空間」へのパラダイムシフト: 創業から約10年間は「ニオイ問題の解決」がメインだったが、取引先から「臭い場所だけでなく、使うと爽やかになるような場所へ展開してはどうか」という助言を参考に、ニオイを「ゼロ」にするだけでなく、その先の心地よさを提供する「真無臭(しんむしゅう)」というコンセプトが確立されていった。

 

動けない植物の「生存戦略」を科学する:独自の仮説から生まれた「真無臭」のメカニズム

・植物の知恵を消臭に応用:植物は自ら動けない代わりに、周囲の環境を自分に有利に整える力(生存戦略)を備えているという独自の仮説が原点にある。例えば、周囲に動物の死骸などの異臭があれば受粉を助ける虫が寄らなくなるため、植物はそのニオイを消し去る力を磨いたのではないか、という着眼点だ。森林の空気が常に澄んでいることや、「檜の屑を牛舎に敷くとニオイが消える」という伝承をヒントに、2〜3年の歳月をかけて液剤を完成させた。

・「物理的吸着」ではなく「化学的分解」: 一般的な脱臭剤(活性炭など)がニオイ分子を吸着して閉じ込める「物理的消臭」であるのに対し、同社の技術は植物由来成分がニオイ分子と反応して無臭化する「化学的消臭(分解消臭)」である。この独自成分は、クロマトグラフィーによる分析でもニオイ分子が消滅することが証明されており、日本を代表する大手企業からも極めて高い評価を得ている。

・徹底した安全性と「自然蒸散」へのこだわり: 空間に放出される成分だからこそ、安全性には一切の妥協がない。急性吸入毒性試験をはじめとする厳しい検査をクリアし、同社の消臭・除菌シャワー装置は2000万回以上の使用実績を誇る。また、家庭用として爆発的なヒットとなった「消臭ビーズ」は、植物が水分を飛ばす「蒸散」の仕組みを応用し、ファンなどを使わず自然な空気の流れだけでニオイを分解消臭する。

 

パチンコ業界向け市場の激減と経営危機の克服:B2BからB2Cへの劇的なV字回復

・20年間続いた安定収益の消失: かつて同社の収益の柱は、タバコ臭が蔓延するパチンコ店向けのB2B事業だった。しかし健康増進法の改正による施設内禁煙化により、この収益がわずか2年でほぼゼロになるという絶体絶命の危機に直面した。

・メディアとインフルエンサーによる再ブレイク: 倒産の危機を救ったのは、2018年頃から本格的に着手したネット販売(B2C)だった。『MONOQLO』で消臭剤ランキングの第1位に選ばれたことや、テレビ番組への出演などをきっかけに注文が殺到。放送直後には一晩で1700万円もの受注を記録し、Amazonや楽天の在庫が全て空になることもあった。

 ・顧客の「気づき」がリピートを生むビジネスモデル: 現在、売上の70〜80%をECが占めるが、その継続率は極めて高い。ニオイに慣れてしまった「嗅覚の疲労」状態にある顧客が、ビーズがなくなった瞬間に「やはりニオイが戻ってきた」と効果を再認識する。この実感が、月を追うごとに雪だるま式に顧客を増やしている。

 

親子で挑むデジタル×アナログの融合:次世代が描く「真無臭インフラ」の未来像

・二代目が牽引する最新のデジタルマーケティング: 現在、取締役の松浦仁音氏がWeb・EC戦略の全権を担っている。Googleやメタ広告のフル活用に加え、父・令一氏との熾烈なPL(損益計算書)管理の議論を経て、売上を維持しながら利益率を大幅に改善させることに成功した。

・B2B市場への再進出と「真無臭」のインフラ化: 家庭用の成功を背景に、戦略の矛先は再びB2Bへ向かっている。自動噴霧装置「HAL SHOWER」が大手スーパーや百貨店、大手不動産会社の管理するオフィスビルなどで相次いで導入され、JTとも喫煙ルームの環境改善で協力体制を構築している。かつての「公害対策」から、今や「企業の福利厚生やブランディングを支えるインフラ」へと役割を変えつつある。

・70歳のチャレンジャーと世界進出への野心: 創業者の令一氏は「70歳になってもチャレンジャー」と公言し、東京拠点の開設や、台湾・中国へのグローバル展開に意欲を燃やしている。親子二代で培った「植物の力」を武器に、静岡から世界へ「真無臭」の価値を発信し続けている。

 

会社概要

株式会社ハル・インダストリ 代表取締役 松浦 令一 氏

設 立:1983年9月
資本金:1,000万円
従業員数:53名
売 上:8億3000万円(2026年8月期見込)

https://www.halindustry.co.jp/

pagetop