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品質へのこだわりと積極的なIT投資で革新を続ける老舗の”魚屋” 【週刊ダイヤモンドMI連動】

東信水産株式会社
2021/09/16

1949年に荻窪で創業。高級魚から定番の魚まで豊富な品揃えや刺身へのこだわりなど、付加価値の高い営業スタイルを志向し、都心の百貨店や高級スーパーで出店を拡大。都内を代表する魚屋として高い評価を獲得する。

織茂信尋現社長の就任以降、旧態依然とした経営構造の改革を推進。タブレットの導入による業務効率化や顧客管理の推進、流通経路の見直し、売り場に設置した「TOSHIN KITCEN」を活用した実演販売などが成果につながり、利益率を大幅に向上させた。

直近では、刺身工場「東信館」の開設によってバックヤードを共有し、売り場効率を高めるととともに、同機能を外部にも提供。都市型スーパーなどを中心に、納入先を拡大中だ。2021年7月にダイヤモンド社から「魚屋は真夜中に刺身を引き始める」発刊。

(週刊ダイヤモンド2021/9/21号P.68「マンスリーインフォメーション」より転載)

 

東信水産の事をもっと詳しく ~取材こぼれ話~

 

『魚屋は真夜中に刺身を引き始める~鮮魚ビジネス革新の舞台裏~』7月6日に発刊

今回の書籍を発刊しようとしたきっかけは、2019年で東信水産創業から周70年を迎えたこと、また私自身の入社から10年以上経過して、何か一つ今までの仕事や会社の歴史などを振り返って記録を残したいなと思ったことがあります。

一方で、私たちが関わる水産業界の事を、より広く知ってもらいたいのも大きなテーマでした。私が実践女子大学で授業を受け持っている事もあり、その教材にも使えるように、第1章から10章まで、それぞれが授業の一コマになるような形で構成しました。

この本を通して一番知ってほしい事は、魚屋という業態には色んなところに限界が来ているということ。調達、出店、人の問題、資金の問題・・・さまざまな手詰まり感があります。同時に水産業界全体が置かれている環境も、資源の枯渇、後継者不足、環境問題、燃料の高騰など、こちらも厳しい課題がいくつもあります。

そのなかで私たちが歩んできた道のり、挑戦してきたさまざまな取り組みがどんな思いを持って、何を目指して来たものなのかと。それが少しでも伝わればありがたいと思って執筆しました。

 

積極的なIT投資、業務改革で利益構造を大幅に改善

私たちも多分に漏れず、従来の”魚屋”としての構造的な問題の中で、厳しい経営を続けてきました。そこで私の社長就任からの最大のテーマは、これからの時代に合った魚屋のあり方をどう構築していくかにありました。そしてようやくその成果は明確な形となり、2020年からは大幅に収益構造が改善しています。

その代表的な取り組みが、今でいうDX戦略です。例えば売り場へのタブレットを導入は、膨大な書類を処理する手間を減らし、情報共有のスピードを高めるとともに、「店長が本業に集中できる」体制を強化しました。

また流通の改革も進めました。かつては中央市場の卸業者さんからの仕入れがほとんどでしたが、自分たちで全国各地に赴き、地方の市場関係者や漁師さんなどと広く関係を築き、新たな調達ルートを確立していったのです。

もっともそれによってすべてを自社で完結しようとするわけではありません。やはり市場機能が持つ優位性も大きく、例えば物流環境はすでに確立されている市場間の流通を活用したほうが断然安い。自分たちがすべきところ、皆さんにお任せするところをしっかり見極めながら、より最善の仕入れ体制を整備しているところです。

 

「東信館」の設置で社内の効率化と事業の拡大を相乗

さらに今後の私たちの事業の成長にとって、大きな役割を果たすと考えているのが「東信館」、いわゆるセントラルキッチン的な刺身工場の存在です。

実は魚屋の店舗って、バックヤードが占める割合がとても高いんです。売り場に対してその比率は10倍ほどにもなります。言い換えれば、店舗面積の中で売り上げを作る場所は、たった1割しかないということです。ですから高い家賃の場所では、非常に経営が厳しい。最近百貨店さんの中で鮮魚売り場を減らしていく傾向がありますが、それはこういった背景があるからなのです。

ただ日本人はみな刺身が好きです。マーケットのニーズはふんだんにあります。であれば、その逆境をどうチャンスにできるかと考えてできたのが「東信館」なのです。

バックヤードを共有することで、店舗は売り場だけにできる。あるいは、生鮮のコーナーに刺身だけの売り場を新設するなども可能です。バックヤードも職人も置かずに、魚のプロがさばいた新鮮なお刺身が提供できる。これは小売りの皆様にとって、有力な売り場コンテンツになるはずです。

実際に、都心型のスーパーさんを中心に、少しこだわった食材を販売したいお店からの引き合いがとても増えており、近年拡大傾向にある都心型ミニスーパーなど、さらに幅広く連携を進めたいと考えています。

ちなみに「東信館」という名称は、かつて香港に進出していた時に、現地法人の社長をしていた叔父さんが作った剣道場に名前に由来します。単に労働をするだけの場所ではなく、日本の伝統文化である刺身や寿司の技術を学び受け継ぐ鍛錬の場所。そんな思いを込めて、「東信館」の名前を復活させたのです。

 

食料の供給機能とエンターテインメント性を兼ね備える魚屋に

私は魚屋として二つの方向性を共存しないといけないと感じています。魚屋の絶対的な使命となる食料の供給機能を果たすこと。これがまず商いの根本にあります。もう一つは魚屋のエンターテイメント制。例えば立派なマルの魚を並べて目で楽しみ旬を感じてもらう。あるいは目の前で大きい魚を切り分け、その様子をお客さまに楽しんでもらう。そういうエンターテイメント制も魚屋は忘れてはいけないと思っています。

そういう意味でも私たちのアイデンティティの根幹にあるものとして、「魚屋」という言葉は大事にしています。流通も行いDXなどのシステムにも力を入れていますが、それらはすべて魅力的な魚屋の実現のため。昔ながらの変わらない魚屋の伝統と価値を、これからも時代に合った形に変えつつ、大切な食文化や水産資源を守り育てていくのが、私たちの重要な使命だと考えています。

 

会社概要

東信水産株式会社 代表取締役社長 織茂 信尋 氏
創業:1949年1月
資本金: 5000万円
社員数:260名
年商:51億円(2021年1月期)

http://www.toshin.co.jp/

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