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“病原体を媒介する生物への知見”を生かし、都市の衛生環境向上に注力【週刊ダイヤモンドMI連動】

シェルグループ
2021/10/25

創業者とシェル石油との縁で、ガソリンの廃液を精製して殺虫・殺鼠剤を作ったのが企業の原点。高度成長期に都市開発が進む中で、大手不動産会社とともに衛生的な都市環境づくりのための害虫駆除の仕組みを確立し、1970年の建築物衛生法の公布以降は、水質検査や空気環境測定など、オフィスビル・商業ビルの衛生管理をワンストップで対応する環境を整えてきた。

しかし2002年の法令改正により、業界は大きく変容。同社も新会社エシカルを設立するなど、殺虫剤を多用しない害虫管理のあり方を志向し、啓蒙・教育・予防活動に注力。「害虫の生態系での有益な側面などをアートにした」害蟲展は大きな注目を集める。今後は、長年培ってきた「病原体を媒介する生物への知見」を生かし、都市生活の安全を守るためのコンサルティング能力を強化していく。

(週刊ダイヤモンドマンスリーインフォメーション 2021/10/30号 P.74より転載)

 

シェルグループのことをより詳しく ~取材こぼれ話~                 

 

ペストコントロールを軸に、衛生的な都市環境づくりを推進

戦後ペストコントロール(害虫駆除)を学んだ父が、1960年に創業したのがシェル商事です。事業を始めるきっかけと、殺虫・殺鼠剤の原料をご提供頂きましたシェル石油様とのご縁に
感謝をこめて、社名をシェル商事にさせていただきました。

高度成長期のビル開発が進む中で、衛生面の向上がより強く求められるようになり、東京駅付近の土地と建物を掌握されていた大手企業様とともに、実際のビルで殺虫・殺鼠剤の効果を試しながら、全国に拡大したのが私たちの事業の大きな成長基盤になっています。

さらに1970年4月に公布された「建築物衛生法」によって、日本のビル環境の衛生対策はより強化され、例えば3000㎡以上の特定建築物は、年に2回の薬剤の定期散布が義務づけられるなど、衛生業務のニーズはより拡大していきます。

 

▲シェルグループ サービスライン ※詳しくはこちら

弊社は、創業間もない頃より自社検査室の整備などに注力し、水質検査や空気環境測定、(入居テナントの)食品の菌検査など事業の幅を広げ、ビル管理会社様をサポートし、衛生環境管理に貢献させて頂いております。

父親は口癖のように「単なる何でも屋さんに成り下がってはいけない」と話していました。目指しているのは「衛生的な都市環境づくり」だと。その信念が私たちの会社の経営の根幹にあります。

 

殺虫剤頼みではなく、「病原体を媒介する生物への知見」を生かした予防の領域へ

しかし2002年の法令改正により、業界は大きく変わります。地球環境や人体への影響に配慮し、定期的な薬剤の全面散布ではなく、害虫の発生があった場合のみ対策をするように指導が変わったのです。この改正は、害虫駆除業界全体にとって、収益構造を大きく変え、これまでとは異なる考え方をお客様へご説明する必要がありました。
また、ご提案の内容と価格のご提示が各社まちまちとなり、収益構造にも影響がでることになります。

ただ私としては、かねてから「従来の殺虫剤に強く依存する対策」に懸念を持っており、この法令改正のコンセプトを正しくお伝えすることができれば、業界が大きく変わるきっかけになるとも感じました。

衛生的ではない現場を根治治療として清掃することなく、昆虫や小動物を誘引し、繁殖させ、殺虫剤を用いて駆除をすること。それは本来殺さなくてもよかったかもしれない命を、わざわざ増やしてゴミにすることです。さらにそのために大量の化学薬品を使わなくてはいけない。それは将来ずっと続くサスティナブルな事業モデルとは言えないからです。

自分の子供が生まれてからは、より健康的な環境を子供たちの未来のために創ってあげたいという思いもより強くなり、あらためて創業の理念に立ち戻って「地球環境にやさしい都市衛生管理」を追求していきたいと思うようになりました。


▲超音波式防鼠装置『バイバイラット3.0B』

「害虫駆除のプロ」ということは、実は「病原体を媒介する生物への知見」を深く持ち合わせた会社とうことでもあります。これからはこの”病原体媒介生物/物質の専門家”としての視点で、より深い提案やコンサルティングを行っていける会社でありたいと考えています。

そういう思いを強くする中で、2018年12月に立ち上げたのが、8thCAL(エシカル)株式会社です。

 

「害虫の生態系での有益な側面」をアートにして社会に発信

8thCALの設立時は、ちょうどインバウンドが盛り上がり、外来生物が増えてきた時期でもありました。特に、ホテルや宿泊施設などの人が長時間利用するような施設でのトコジラミの大量発生が問題となっていました。

私どもも2012年頃より海外の展示会などに赴き効果的な資材をさがしておりましたが、日本の文化や什器の形状に即したものが見つからずにおりました。そんな折、ある繊維会社が研究開発されていた忌避剤になる得る成分と技術との出会いがあり、この可能性に注目したのです。これなら世界と勝負できるのではないかと。

ただ残念ながら、コロナ禍の影響を受け、大きく動くことができなくなり、今あらためて発信のタイミングを図っているところです。

8thCALとして手掛けていきたいものは、啓蒙活動・教育事業・予防事業です。「薬剤を使わない都市衛生管理」のために何ができるかを、みなさんと一緒に考えつつ、その手法を考案し浸透させていくことだと考えています。

啓蒙活動として、私たちのミッションを具現化したのが「害蟲展」です。害虫といわれている生物たちも、それが「害」だと思うのは人間からの目線や都合であり、生態系にとっては無くてはならないものだったりします。そういった害虫と呼ばれる生物たちの命の美しさや存在意義を一般の方々に知ってもらうことで、薬剤で駆除するだけが害虫対策ではないことを少しでも多くの方々に気付いていただければと考えました。

おかげさまで第一回目はとても反響がよく、今年の秋には東京と大阪で第二回目の展覧会を開催することができました。

シェル商事、8thCALともに、まだまだ今後の展開において手探りの部分は多くありますが、長年培ってきた歴史や実績を生かして、私たちらしい都市環境衛生のあり方をしっかり深掘りしていきたいと考えています。

 

会社概要                                     

シェルグループ 代表取締役社長 岡部 美楠子

創業 1960年3月
資本金 3000万円
従業員数 196名
売上 19億3844万円(2021年3月実績)

・シェル商事株式会社 https://www.shell-syoji.co.jp/

・8thCAL株式会社 http://8thcal.design/

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