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「農家の直売所」を通じて、生産者のより主体的な経営参画を促す仕組みを構築【週刊ダイヤモンドMI連動】

株式会社農業総合研究所
2021/05/24

全国の生産者と都市部スーパーマーケットを直接結ぶ流通プラットフォーム「農家の直売所」が事業の中核。「新鮮なものを安く」消費者に届け、生産者の「収入を増やす」 Win ーWinの関係を創出し、生産者9,506名、販売所1,672カ所(ともに2021年2月現在)をネットワーク。前期の流通総額は108億6200万円になる。

強さの基盤にあるのは独自の集荷施設を起点とする物流網と、値付けから出荷先の決定、売上管理など、生産者が自ら運用可能なITの構築。特に後者の「生産者の主体的な経営参画を促す仕組みづくり」は同社の重要な命題で、より大きなスケールの流通改革を視野に入れる。直近ではJR東日本や大手卸、青果市場などとの協業を強化するほか、産直卸事業にも注力し急速に売り上げを伸ばしている。

(週刊ダイヤモンド2021/5/29号P.68「マンスリーインフォメーション」より転載)

 

農業総合研究所の強さをキーワードで読み解く ~取材こぼれ話~               

「物流」×「IT」の力を生かした新たな農産物流通プラットフォーム

主力事業の「農家の直売所」は、生産者の顔の見える新鮮な野菜と果物を都会のスーパーマーケットで簡単に買える環境を提供するプラットフォームです。全国に展開する私たちの集荷場に生産者が収穫した農産物を持参いただき、それをスーパーに設置した「農家の直売所」のコーナーに陳列する、その流通全般を担っています。

既存の市場流通との大きな違いは、市場原理に縛られることなく、生産者が好きなものを生産できて、好きなスーパーマーケットの店舗を自分で指定できて、販売したい金額を自分で決められること。さらに今までなら出荷できなかったようなちょっと形の悪いものだったり、B級品だったりする品でもニーズに合わせて出荷できるといった特徴があります。

さらに収穫したものが翌日には店頭に並ぶというスピードの速さから、消費者の皆さまにはより新鮮なものがお届けできますし、熟すまでぎりぎり待ってから収穫するといったことも可能になります。

消費者にとっては新鮮なものを安く、生産者にとっては収入が向上し、販売店にとってはより良い品を手軽に提供できる。そんなWin-Win-Winな関係が構築できています。

▲「2021年8月期 第2四半期決算説明資料」より

ただ私たちが重視しているのは、単に既存の市場を置き換えるということではなく、生産者が主体的に出荷できて、メーカーポジションを取れる流通の仕組みです。作るところから口に入るまでを、生産者がよりイニシアチブを持ち、経営意識を強く持って参画できる、そんなプラットフォームづくりを心掛けています。

 

スーパーを通した流通改革を進めないと、農業の向上にはつながらない

日本では、野菜と果物の出荷ルートの約70%がスーパーマーケットです。ですから私たちが意識しているのは、このスーパーを出口とした大量流通、大量販売のマスのルートとどう関わり、変えていくべきかということです。

農産物の流通で一番難しいところは、物流だと考えます。例えば、白菜やキャベツなどを想像していただくと分かるように、大きくて、かさばって、鮮度が要求されて、それなのに価格が安い。ですから、一個当たりの価格を下げていくためには、大量流通・大量販売のルートをしっかり確立していくことが重要になります。そこで私たちは、スーパーとともに事業を作ってきました。

そして私たちのプラットフォームは、ファーストワンマイルとラストワンマイルに直接関わっていないという大きな特徴があります。集荷場には、生産者に直接持って来ていただき、販売はスーパーなどの小売店にお願いしています。私たちはその間を結ぶ、物流とITの仕組みに専念することで、より効率的な仕組みを構築できたと言えます。

実は私自身、自分で農業の生産も販売も手掛けた経験があります。そして今流通の仕事をしていて感じるのですが、農業における”豊作貧乏”という、構造的な矛盾にずっと懸念を感じていました。いいものがちゃんとできたらちゃんと収益が上がって食べる人も喜んでくれる、そういう社会であるべきだと。

なぜ豊作貧乏ができるかというと、やはり市場の相場のなかでしか取引ができていないから。でも市場の外に、生産者が自分で値段をつけ、自分で販路を決められる流通を作ったらもしかしたら豊作貧乏がなくなるんじゃないかなと思うのです。

ですからもっともっと、流通額を上げていかないといけない、今の100億くらいではまだまだ影響は限られていますから、次は1000億を狙わないと。そういう想いを持ってスタートしたのが「産直卸」事業です。

▲「2021年8月期 第2四半期決算説明資料」より

これは私たちのプラットフォームを生かしながら、ある程度まとまったロットでスーパーに農産物を直接卸していく事業です。しかし単に卸すだけではなく、生産者の顔やストーリーを表に出すなど、しっかりブランディングを行いながら提供していく。市場価格に振り回されず、価値にあった値付けができる流通にしていくことも重要なポイントです。

おかげさまで、事業をスタートしてから取扱高は目覚ましく伸びてきました。そしてこれら「農家の直売所」事業と「産直卸」事業を両輪に、市場価格に左右されない流通を1000億創出すること。さらに最終的には2035年に1兆円の野菜と果物を扱うという目標を立てています。

ただこれくらいの規模になると、多分市場外流通だけでは届かないでしょう。ですから市場外はもちろん、市場流通にもしっかり関わって、生産者にもお客様にも価値ある流通を作っていくのが僕らの使命じゃないのかなと思っています。

 

会社概要

株式会社農業総合研究所 
代表取締役会長 CEO 及川 智正 氏

設  立: 2007 年10 月
資 本 金: 4億9,400万円
従業員数: 231名
売上高 : 34億7,300万円(2020年8月期)
東証マザーズ(3541)

https://nousouken.co.jp/

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